世界が崩壊してから1年後、私は離れ離れになっていた仲間達と再会し、
世界を救うために再び戦いの日々に身を投じる決意をした。
戦い・・・・それは私にとって暗い過去の象徴でしかない。
それでも大切な人達・・・・仲間達やモブリスの子供達、
そしていつも私の心に温かいものをくれるあの人の笑顔を護るためにも倒さなければならない者がいるから。
だから―――。
最後の戦いへの準備を全て終え、後はがれきの塔に乗り込み、ケフカを倒すだけ。
その日に備え、私達はファルコンをサウスフィガロの近くに泊め3日の間、
体を休めて英気を養うことにした。
今日はその最後の1日。
明日には今まで以上に苦しい戦いが待っている。
そんな大事な休息期間だっていうのに、
エドガーは"国の様子が気になるから"と言って1人でフィガロへ帰ってしまった。
エドガーは戦闘ではいつも前に出て私達のことを守ってくれるし、
作戦とか今後のことについていつも夜遅くまで考えてくれている。
一体、エドガーはいつ寝てるのかしら?と思ったこともいっぱいある。
だからこの3日間、エドガーは誰よりも休むべきだったのだと思う。
それなのにエドガーは皆が止めるのも聞かずに行ってしまった。
せっかく2人でゆっくりできるのにってすごく残念に思ったけど、彼らしいと言えば彼らしい。
セリスとロックが一緒に過ごしているのを見たときはちょっと羨ましいと思ったけど、
私はおとなしくエドガーの帰りを待つことにした。
今の時間はお昼を少しまわった頃――。
厚い雲で隠されてしまっている太陽の位置を見て知ることはできないけど、
"俺がいない間、これを俺だと思って"
と言ってエドガーが渡してくれた懐中時計は今の時間をしっかり教えてくれる。
エドガーが帰ると予告した時間に、どんどん近くなる。
もうすぐ、彼に会える――。
そう思うと、その"もうすぐ"が1秒でも早く来て欲しくなっていく。
今すぐに会いたい、待ちきれない――。
そう思った私はファルコンから出て、エドガーを迎えに行くことにした。
太陽の光が届かないせいで草が伸びなくなってしまった草原を、私は1人歩いていた。
もうすぐ会えるはずのエドガーのことを思い浮かぶと自然と足取りは軽くなる。
サウスフィガロとフィガロの間にそびえる洞窟が目の前に見えてきた。
ここで待っていようと思い、私は少し先に立っていた葉無しの木の根元に腰掛けようと近づく。
しかし、そこにいたのは――。
「エ、エドガー・・・・・?」
眩しいくらいに綺麗な金髪に青いリボン。
そして背が高くてお人形みたいに整った顔・・・・・私が会いたくてたまらなかったエドガーその人だった。
いつもは私が側に近づくと空みたいな綺麗な蒼い瞳で優しく微笑んでくれるのに、今回はそれがなかった。
エドガーは目を伏せて木の幹に寄りかかって座っている。
つまりそう、眠っているのだ。
「もう。エドガー、風邪引いちゃうわよ。」
そう言って私はエドガーの肩を揺すった。
しかしエドガーは起きてくれなかった。
いっつも動いてばかりだもの。
きっと疲れてるんだわ、仕方ないわよね・・・・。
私はエドガーが起きるのを待っていることを決めて、隣に座ってエドガーの寝顔を見た。
あれ?なんだか・・・・・。
「あんまり気持ちよさそうじゃないみたい・・・・・。」
少なくとも、眉間にしわを寄せて難しそうな顔して寝てるのって、
安眠してるって言えないんじゃないかな?
太陽が出てなくて寒いせいかもしれないけど・・・・。
「・・・・エドガー、怖い夢でも見てるの・・・・?」
そんな風に見えた。
普段あんまり寝てないんだから寝れるときくらい、しっかり安心して眠って欲しい。
どうすればいいのかしらと考えを巡らせていると、昨日のセリスとロックの様子を思い出す。
「そうだっ♪」
私は、エドガーを起こさないように気をつけながら、
私の膝の上にエドガーの頭が来るように寝転がらせる。
昨日、ロックは昼寝中、セリスに膝枕してもらっていた。
2人とも、とても幸せそうな顔をしていた。
でも、いざやってみると・・・・ちょっと・・・・照れくさい。
そう思いながらエドガーの寝顔を伺っていると、
エドガーは急に変わった体勢を整えるために、横向きの姿勢から仰向けになった。
エドガーの寝顔が真っ直ぐに私を見上げる。
その顔はさっきまでの顔とは違っていた。
眉間にしわはないし、難しい顔もしていなかった。
モブリスの子供達と同じような、安心しきった穏やかな顔。
その寝顔を見ていると、こちらも安心してきて自然と私の口元に穏やかな笑みが浮かんでくる。
「エドガー、いつもお疲れ様。だから今はゆっくり眠ってね。
貴方が起きるまで私はここにいるから。・・・・・大好きよ、エドガー。」
エドガーは眠っているから聞こえてはいないと思うけど、
それでも心には届くように願いながら、私はエドガーの頭をそっと撫でた。